2007年12月11日

小橋が勝った!腎臓癌に勝った!

小橋が勝った!腎臓癌に勝った!

12月2日、日本武道館に行ってきました。
小橋健太の復帰戦を観てきました。
一週間経ち気持ちも落ち着いて(風邪も大分よくなって)、ようやくまともに感想が述べられるようになりました。

武道館は、プロレス観戦では初です。でかい。頑張ってアリーナS席だったので、俯瞰のすり鉢型に、なんともいえない巨大感を煽られます。
NOAHさんを中央の大きな会場で観るのも初めてなので、そちらも楽しみ。
エアロの「DREAM ON」にテンションも最高潮…第一試合からセミまで、休憩なしだというのに一気に観れてしまいました(実は一試合だけ除く…)。観客もプロ揃いで、あんなにでかいのに静岡文化会館大会議室で観ているかのような一体感と盛り上がり。

そんな中「もう声が割れた」は第二試合中盤での私の一言。夢中になって応援していたらそのざまです。これでメインまで持つんかいと不安になりつつも、いい技が出たら「うぉおぃっ」ってなりますよなぁ。

そんな調子で迎えた、メイン。小橋健太の復帰戦。セミが終わるや客席総立ち。自然に沸き起こる小橋コール。
その中を秋山準が入場し、高山善廣、三沢光晴がリングイン…いよいよ小橋が…。小橋コールをしながら泣きそうでした。そして小橋健太が姿を現した瞬間…ひと際、小橋コールが大きくなった瞬間…泣いてしまうだろうと予想していました。泣きませんでした。ひたすら声を張り上げていました。感動しているのだろうと思われる戦震が体を襲う中、ひたすら小橋の名前を呼んでいました。感動とか感激とか感謝とか…言葉では表せない感情でした。泣くことすら忘れてしまったようでした。ただもう、小橋小橋と言いたくて仕方なかったというか…ちょっとしたパニックのような…。
今になっていらぬ分析をすると、小橋健太がスーツ姿などではなく、プロレスラーとして入場したからだろうと思います。だから「癌を克服した人」への感動よりも「プロレスラー・小橋健太」を応援したい気持ちが先にきたのだろうと。うん。どうでもいいんですけどね、そんな分析。

花道に現れた小橋健太は、ゆっくりと場内を見回してから、一歩一歩を踏みしめ堂々とリングに向かいました。その一挙手一投足が、そこをゆくものが「小橋健太」という作品なのだと知らしめました。それは「小橋健太」以外の何者にも放ち得ない空気でした。

リング上で、「小橋健太」の名前がコールされた時、紙テープを投げました。思いっきりいったせいで、右わき腹をちょい痛めたのはここだけの秘密です…。

小橋コールにしても紙テープにしても、きっと誰もがやりたかったことで…もしかしたら二度とできなくなっていたかもしれないことなんですよ。だから小橋の名前を歓喜の中で呼べることが嬉しい、紙テープを投げられることが嬉しい。その当たり前がいちいち嬉しかったのは私だけじゃないと思います。

ガウンを脱いだ小橋健太は、若干やせていました。目に見える闘病の代償がそれでした。それでも尚、小橋健太の顔は以前に増して、小橋健太でした。

試合開始直後…小橋の最初のチョップに、正直、どきっとしました。当たりも悪く音もなく、力強さが感じられませんでした。場内も少しざわついたようです。けれども、秋山準、三沢光晴の容赦ない攻めに試合勘が戻ったのか、徐々に調子を上げていきます。
マシンガンチョップ連打。ハーフネルソン。袈裟斬り。スタンドで仰向かせてからの打ちおろしチョップ。スタンドで俯かせてからの延髄への打ちおろしチョップ(!)。小橋健太が帰ってきたことを裏打ちするような技が連続しました。
ただ。プロレスはそれだけで「帰ってきた」になんかならないもの。
三沢のエルボー。勿論ローリングエルボー。タイガードライバー。秋山のジャンピング・にー。エクスプロイダー。それらに耐え抜き立った瞬間、小橋健太が本当に帰ってきたことが証明されました。

そして、秋山を寝かせておいて、コーナーへ上り…ムーンサルト!
入場時に泣かなかった私が、ここでいってしまいました。高くキレイに弧を描いたさまは、ヘビー級の試合とは思えないくらい、というか癌で腎摘出をした人間とは思えないくらいの…あんなもん、映画ですよ、映画。実際にありえないですもん、あんなん…いや、ありえたんですよね…ありえたんですよ、目の前で。復活以上の現実に涙腺がガバっといってしまいました。

後半は、「復帰戦」という看板に甘えることなく勝ちにいく小橋の気迫もさることながら、勝たせようとする高山善廣の本気に燃えました。思えば、高山の復帰戦となるはずだったのがこのカード。ある意味、高山にとっても復帰戦だったのかもしれません。鉄人と帝王は、「プロレスをするな」とどこかのしょーもない神様かなんかに言われて疾患を負わされたわけです。ところがそいつにラリアットの一つもくれてリングに帰ってきたんですよ。その二人がリングに立って、燃えないわけがありません。

三沢光晴のエメラルド・フロウジョンをも返した小橋でしたが、秋山に担がれコーナーに上げられ、そこからの雪崩式エメラルド・フロウジョンでカウント3を聞きました。小橋健太の復帰戦は「黒星」でした。

三沢光晴の勝利を受けて、会場に三沢のテーマ曲「スパルタンX」が流れ出します…それに合わせて、大「小橋」コール!
本来ならありえないこと。勝者のテーマ曲に合わせて敗者の名が大合唱されるなんて。言っちゃえばこんなに失礼なことはないはず…でも、あの場面はそれしかなかった。それでよかった。…二度目の号泣きました。スパルタンXに小橋コールですよ?ちょっとした伝説です…。これがプロレスなんだよと、たかが木っ端ファンの身にして、ひどく誇りたい気持ちになりました。

小橋は、「花道から帰れ」と促されて秋山・高山に開けてもらったロープをくぐり…花道を引き上げていきました。まだあと三時間は観ていられるぞと惜しみながら、小橋を見送りました。

それにしても…欠場前に比べても遜色ない内容でした。勿論、全日時代からのファンの人やもっと玄人目をした人には不満もあることでしょうが、私にはそう思えました。三沢・秋山のえげつない厳しい攻めがあったからでしょうし、高山の勝つためのフォローがあったからでしょうが、それを咀嚼し試合内容に昇華した小橋健太はただ復活しただけではなく、いい意味で裏切ってくれました…などとそこそこ冷静に感想を述べていますが、試合直後の現地ではもう、口も聞けないくらいの放心状態でした。よくちゃんと帰ってこれたなと思うくらい。いやちゃんと帰っては来れてないんすよね…家帰ってみると、何故かちっちゃいオカリナを買ってたり変な形のペットボトル買ってたり…いつの間に買ったのやら…。

TVの放送も観ました。
また、泣いてしまいました。
最後…三沢が小橋から3カウントを取った瞬間…つまり三沢が小橋に勝った瞬間、実況の矢島アナが、
「小橋が勝ちました!腎臓癌に勝ちました!」と叫んだ時に…。
なんていうのか、そういうことだよ!と。
小橋が勝った。
そういうことだと。

本田多聞が11月のシリーズを欠場して小橋の練習に付き合ったといいます。復帰戦直前にも自ら志願して、1千発近い逆水平の練習台にもなったそうです。そのため、12月2日は真っ赤に裂けた胸のままで自分の試合に臨みました…。本当はセコンドにつきたかったところ解説を頼まれ、他の人に解説させるなら自分が、と解説席で小橋健太の復帰戦を見守りました(週プロ増刊より)。その解説中に涙してしまい、声を詰まらせていました。

こうしたパートナーがいて、潮崎くんのような弟子がいて、高山という同志がいて、秋山というライバルがいて、NOAHという環境があって、理解ある医師があって、あれだけのファンがいて、小橋の強靭な意思があって…。
だから、癌なんかが小橋を倒せるはずがない。

なんか阿呆みたいに気合が入ってきた。
よし。俺も頑張ろう。

ベタですが…、
小橋、ありがとう。

(↑敬称略です)


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